最近ではなんでも機械的な作業はコンピューターに任せられるようになって、人間の仕事がどんどん奪われていく時代になりました。
大手証券会社のゴールドマン・サックスが600人いた株式トレーダーを2人に減らして代わりに人工知能(AI)に仕事をやらせるようになったという話題で衝撃が走ったのもまだ記憶に新しいです。
これからもどんどん投資関連の取引はコンピューターに置き換わっていくことは間違いないとして、そうなると
人間はコンピューターに負けてしまうのか?
人間によって取引を行っている今までのような個人投資家は儲からなくなってしまうのか?
という話をしてみようと思います。
僕は株式投資の場合、必ずしもそうではないと思っているので、その理由を書いていきます。
目次
機械的なルールによる売買であれば、コンピューターに負ける
まず明らかなのは、機械的なルールを使って利益を出そうとする売買は確実にコンピューターに負けるということです。
それはスーパーのレジ打ちと同じで、人間が一つ一つの商品を見て電卓を叩くより、バーコードでピッとやって合計を出したほうが明らかに早いのは当たり前。
例えば、朝の寄り付き前の板を見て瞬時に判断して買うかを決めたり、1分1秒を争うスキャルピングなんかはコンピューターのほうが強いです。
計算して機械的に行うようなものは、コンピューターに任せてしまえば人間の何倍も素早く処理して実行し、しかも正確で感情にも左右されないので、勝ち目はありません。
ただ、そんな機械的なルールは再現性は高いけど、多くの人が使うことで使えないルールになってしまうし、取引に参加する人が入れ替わったり、世界の状況が移り変わる中で動きもわずかに変わっていくため、ずっと使えるルールではありません。
人工知能(AI)がどうとか、そんなこと以前の問題です。
その手法を使い続けるためにはいずれにしろ、ルールをメンテナンスをしないといけないので、そこで人工知能(AI)の出番なのかなと思います。
組織で売買を行っているからにはもちろん取引の方針があるわけで、「こうなったときはこうする」といったようなものがある程度決まっているでしょう。
そこまで機械に任せられるなら優位性があるのだと思います。
しかし個人投資家が儲からなくなるわけではない
しかし、株取引はそんな単純な構造ではないのがおもしろいところ。
じゃあこのまま大きな組織がみんな人工知能(AI)を使うようになったらどうなるか。
個人投資家は勝ち目がないの? って話になるんですが、別にそんなことはないと思います。
将棋やチェスのプロが人工知能(AI)に負けたって話はありますが、それは駒の数が決まっていて、それぞれの駒が動かせる範囲が決まっていて、制限時間が決まっていて、こうなったら勝ちだ! と明確に決まっているから、制限の中でいくつかの条件を組み合わせ、最適な答えを出すコンピューターに軍配が上がります。
野球やサッカーもおそらく人間の肉体が完全に再現されたロボットがいたとすれば、人工知能(AI)を前にして人間に勝ち目はないでしょう。
だけど株取引の違うところは、勝ち負けのタイミングが人それぞれ違っていてハッキリしていないこと、そして動かす株数や、タイミングも自由であるということです。
一つのグラウンドがあって、そこに入れ替わり立ち代わりいろんな参加者がいろんな考えを持って参加しては抜けていきます。
そして一つの瞬間で誰かが儲かって、誰かが損をし、お金が移動していくわけですが、そもそも勝ち負けを繰り返して最終的に儲かった人が勝ちなわけで、制限時間もありません。
10年間で1回だけ売り買いをして大きく買っても、それはそれで勝ちなのです。
時間もルールもあいまいな世界で、その瞬間ごとに買うか売るかを決めるだけの自由な中ではコンピューターが必ずしも優位であるとは言えないのが株取引だと思います。
そもそも未来がわからないからプレーヤーみんな平等
さらにいうと、将棋やチェスなら将来がある程度見えます。
そもそも動かす駒の数が決まっていて、それぞれの駒に動かすパターンが限られているので多くても次の判断は数百通りしかありません。
そしてその次に相手がどう動くかも数百通りしかありません。
一方、株の未来は一切分かりません。
一切というのも言い過ぎかもしれませんが、例えば
「明日のトヨタ株は6000円だ!」
とぴったり言えないということです。
明日、上がるか下がるかなんてことさえ分かりません。
例えば、明日 日本に大地震が起こればおそらく大暴落するでしょう。
だけど地震が起こるなんてことは人間にはわからないし、人工知能(AI)にもわかるはずがないです。
大地震に限らずもっと小さなもので考えるとそういう事象が他にもたくさんあります。
自然災害や人の行動やそのときの気分みたいな、神様じゃないとわからない要素がたくさんあって、それらの条件を全てまとめて参加している人たちが出した答えの平均値がそのときの株価として現れているだけです。
だからどれだけ材料があっても予想する術がないんです。
予想することができない前提で、それでも何かの材料から未来の値段に目星をつけて、売買していかなければならない冷酷な戦いであるからこそ、人工知能(AI)が有利だということはありえないということです。
じゃあ材料とか条件を全部コンピューターに教えれば人工知能(AI)が勝つんじゃない?
じゃあ、過去の価格が決まる要因となりそうなものを全部コンピューターに記憶させれば、うまく人工知能(AI)がやってくれるんじゃないか?
とも言いたくなります。
じゃあもし仮にそれで始めたところ、Aさんがこの1ヶ月間、60パーセントの確率で勝てたと仮定します。
しかし次の1ヶ月は勝率30パーセントになってしまいました。
なぜならAさんが急にダントツに勝つようになったということは、他の誰か、例えばBさんが急にダントツに負けるようになったということになります。
今までの取引がうまくいかなくなったので、Bさんは今やっているやり方を勝てる方向に調整していきます。
そうすると、Aさんが同じルールで勝つことはできなくなっていきます。
じゃあそれを受けてAさんの人工知能はさらにルールを改良。
また一時的にダントツな勝率を上げることができても、今度は別の誰かがルールを改良して、結局元に戻ります。
何が言いたいかというと、プロもアマも人工知能(AI)も平等な株式の世界では飛び抜けて勝つことは現実的ではないということ。
それは株式取引が何十年も必勝法がない中で、破綻せずに取引が続いていることが証明してくれています。
だから仮にもコンピューターが有利であるわけでもないし、ちょっと優位性があって勝つようになったくらいで、今まで勝っていた個人投資家が儲からなくなるなんてことは考えづらいというわけです。
うねり取りが興味深い
最近この本を読んだのですが、非常に興味深いことが書いてありました。
「うねり取り」という売買手法を解説している本なのですが、この手法がよくできていて、「将来の株価はわからない」という前提で、どうせ未来がわからないから将来の値動きを当てようとするのではなく、現在の価格を見て、そのときの流れにのって株を増やしたり減らしたりして対処していこうというもの。
絶対にわかるのは株価は上下に波を打って動いていて、明日が大きな山のてっぺんならその次の日に谷の底であることはなく、ある程度連続性を持ってウネウネした形になっているということ。
これをもとに、未来を当てようとする「予測」ではなく、株数を増やしたり減らしたりする「対処」によって最終的に儲けを出そうという方法がうねり取り。
個人の裁量によって判断する「ゆとり」が設けられており、より人の感覚に近い感性で波乗りをするように納得いく売買を展開していくところがおもしろいんです。
この相場哲学というか、心構えは他のトレードにも通ずるものがあり、僕もこのエッセンスを普段の取引に活用しています。
最近出た本で、このうねり取りの実践家で有名な林輝太郎さんの息子さんが本にまとめられているので、気になったら読んでみてください。オススメです。
ビットコイン(仮想通貨)投資もやっています
最近話題の1000円からできるビットコイン(仮想通貨)投資もやっています。
詳しくは以下の記事に書きました。
仮想通貨投資をやったら1晩で5,000円の利益。ビットコインのチャートでデイトレしてみた結果