この記事の続きです。
1話目はこちらです。
4月、新入社員として華々しくデビューする当日は朝からはりきっていました。
余裕を持って早起きし、慣れないスーツに着替え、革靴で満員電車に揺られ、会社へと向かいます。
全てが初めてのことばかりで朝から気が抜けません。
入社式
会社に着いてさっそく入社式です。
社長のありがたいお言葉をいただいて、記念撮影し、その日は手続きやらなんやらであっという間に終わりました。
同期のメンバーも良い人ばかりで楽しそうだし、なんとかやっていけそうだなあと思いました。
就職氷河期だけあって採用された人数は例年の3分の1だったようです。
確かに思ったより少ない気がしていました。
その代わり、初日から一人一人ととても仲良くなることができました。
満員電車であっけにとられる
東京に住んで驚くのはやはり人の多さ。
満員電車の光景を初めて目の当たりにして驚きました。
隣駅から電車が来るとすでに満員になっており、それでもこれ以上入りきらないだろうという鉄の箱の中にみんな一生懸命乗り込んでいって、なんとかぎゅうぎゅうの中に入ったはいいものの、これでもかとさらに人が乗り込んでくるのです。
挙げ句の果てには駅員さんがはみ出した人を押し込むようすはもはや異常としか思えません。
白髪の生えたおじいさんが負けずに重そうな黒いビジネスバッグを持って満員電車に果敢に攻めていくようすを見ると、将来こうなっていたくはないなと未来が思いやられるのでした。
ましてやもともとわかってはいたことなのですが、家から会社まで、通勤に1時間半かかるのです。
あまり都内の中心地になると家賃がかかるので不動産の方も気を利かせて選んだのでしょうが、これにはなかなかしんどい思いをしました。
しかしこれはまだマシなほうで、県外から会社まで3時間かけて通勤している人もいて、僕はまだマシなほうだと知ると頭が混乱したのを覚えています。
3時間っていったら往復で6時間……。
その6時間を睡眠に充てられたらどれだけ時間が有効活用できるだろう……なんて考えたら僕は絶対そうはなりたくないな、と思いました。
1時間半でもこんなにつらいのです。
これを毎日何十年もやってきた人のことを考えながら通勤していると、電車の中で倒れそうになるのです。
東京に住むということは、これに耐えられる体力を持っていることも必要な要素だなと思いました。
事件は2日目に起こった
事件はさっそく入社2日目に起こりました。
昨日と同じように余裕をもって家を出たのですが、駅の周りにはなにやら人だかりができています。
なんの行列だろう?
気にせず駅に入ろうとしたのですが、人が多すぎて入れません。
かき分けて入ろうとしたのですが、よくよく見てみるとなんとそれは駅のホームまでの行列だったのです。
その日はまれに見る記録的豪雨の影響で電車が遅延していたのでした。
駅のホームから階段、外にまでその行列は続いて、しばらく列が動くことはありません。
これが東京ってやつか。
今になってみれば東京では当たり前の出来事ですが、それでもここまでの騒ぎになるのは1年に1、2回くらい。
そんな頻繁に起こることではありません。
しかし入社して2日目でこんなことになってしまったのでは、今後、雨が降るたびにこんなに電車が遅延して、しかも人がこんなに殺到する騒ぎになるのかと思い、先が思いやられました。
なんとか常磐線に乗りこむことができましたが、背伸びをしないと立っていられないくらいの混雑ぶりです。
あと一人でも多く人が乗れば、みんな圧迫死するんじゃないか。
そこのドアが外れたら何人か死ぬな。
こんなことを考えていると、同じ新入社員らしい人たちの悲痛な叫びが聞こえてきました。
「もう実家帰りたい。」
それが一番正しい答えでした。
この電車に乗っている何人の人がそれを聞いてうなずいたことでしょう。
実際、今この瞬間であれば電車を降りて実家に帰った人が正解であることは間違いありません。
なぜなら僕も全くおんなじことを考えていたからです。
会社に間に合うのだろうか……
やっと乗り換えの上野駅に着いて、外の空気をいっぱいに吸うことができました。
しかしここからがまた長いのです。
乗り換えのホームの途中にロープが引かれていて、自分の意思では先に進めません。
電車がやってきて、ホームに人ごみがなくなったら次の人の塊が案内されます。
乗り換えだけで30分かかりました。
時間に間に合うのだろうか……。
今日は入社2日目です。
最初から遅刻なんてしたくありません。
余裕を持って出たんだからギリギリ間に合うはず……。
そんなことを考えていたらどんどん焦りが増してきました。
以下の記事に続きます。