努力しても報われない。
自分のほうが頑張ってるし実力もあるはずなのに、なんでアイツのほうが評価されてるんだ……?
人生とは難しいもので、ときに理不尽な結果が生まれることがたくさんある。
そんなときに人生はうまくいかないものだ、どうせ自分には才能がないからダメなんだ、なんてことを思ってしまうものだけど、そもそも啓発本に書かれている「努力すれば勝てる」、「実力をつければ成功する」という耳障りの良い言葉に誤りがあると疑ったことはあるだろうか?
有名ブロガー ふろむださんの『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』という本は、人生の成功を決めている要素を暴き出し、心理の裏にあるカラクリをといてくれる禁断の書だと思った。
人間の脳みそはあまりに無意識のうちに騙されていることが多いので、その性質を知るということ、そしてそれを利用してうまく生きる方法に落とし込んである実用書とも言える内容だった。
それと同時に、ブログやSNSにおいて自分のことを信頼してもらうにはどうすれば良いのかを考えるキッカケを与えてくれた。
あまりに現実的すぎて耳の痛いことが書かれていたりもするけれど、個人的に共感できることが多く、新しい引き出しが増えたので紹介。
人間の脳みそは、ときに正しくないものを正しいと判断してしまう
まず人間の脳みそはあまりに単純。ときに正しくないものを正しいと判断してしまう。
本に書かれていた内容の一部を要約すると、あるカナダでの選挙調査でイケメンの政治家は、そうでない政治家の2.5倍もの票を獲得していたことがわかった。
なんとなく見た目で判断されてしまうことが多いことは想像しやすいと思うけど、おもしろいのはその次の調査で、投票者の73%は「イケメンだから彼に投票したわけではない」と思っていたのだ。
本来の能力値を無理やりグラフにすると、このようになる。
しかし現実は、わかりやすく目立って優れていた容姿に引っ張られて他の能力も引き上げられ、全体的に優れているという印象となってしまう。しかも人間の無意識の中で。
これはたまたまではなく、同様の事例はたくさんある。
僕もあまり脳みその感覚を過信しないように気をつけている。
というのも株式投資をやっているうちに、脳みその判断と現実の結果にズレが生じることに気づいた。
ここ数年の間、株のチャートを見ながら短期や長期のトレードをおこなってきたんだけど、自分の感覚でトレードを行っているとどう頑張ってもトントンになるかわずかに負けてしまっていた。
そしてどういうわけか相場環境がよくて右肩上がりにも関わらず、負けてしまう。サイコロをふって上に行くか下に行くかを決めたほうがよっぽど勝率が高いという結論になってしまった。
そこで1回の売買ごとに得た利益を書き出してみると、どうも勝ったときの額が小さく、負けたときの額が大きい。
正しいトレードしていると思っているにも関わらず、無意識のうちに最終結果を悪いほうへと導いていたのだ。
だから実データを見ながら自分の感覚を補正していく、ということをやって少しずつ勝てるようになったという経験がある。
これは投資だけじゃない、人生における物事の多くは人間によるあいまいな感覚によって、正しくないものが正しいとされているものが多い。
この本ではその補正の手助けをしてくれると思った。
錯覚資産とは?
この本のキーになるのが「錯覚資産」。
さっき書いたように、人間の直感では合理的に物事を考えることができない。
人と出会った瞬間に紙で数値を書き出してデータを取ることはできないのだから、世の中は直感で印象がいいものが有利になりやすくできている。
そして判断が間違っているにも関わらず直感で判断してしまう「思考の錯覚」を持っている人が愚かかといえば、それは人間の生まれながらの性質であり、どうにかできるものではない。
そんなわけなのでこの本では、人間の生まれながらにして持っている性質に合わせて自分が有利になるように行動していくというアプローチを試みている。
以下は本から抜粋。
「売り上げを半期で73%増やしました」
「DAU500万人のアプリのサーバを運用していました」
「株式会社凸凹商事の営業部長をやっていました」
「月間300万PVのブロガーです」
「あの有名人のベストセラー本を担当した編集者です」
なんていうわかりやすい実績は、どれも「思考の錯覚」を作り出す。
「人々が自分に対して持っている、自分に都合のいい思考の錯覚」は、一種の資産として機能するということだ。
本書では、これを「錯覚資産」と呼ぶ。
たとえ自分の実力によるものではないとしても、わかりやすい実績は仕事や人間関係などにおいて 自分の実力以上に有利にはたらいてくれる。
そんなわけなので、この錯覚資産をうまく運用できる人こそ人生において多くの利益を享受できるようになるということだ。
たしかにエンジニア向けのイベントに行くと過去の実績があったほうが話を聞いてもらいやすくなるし、引越しで不動産屋さんをあたったときは 担当者が「本部長」だったり「代表取締役」といった肩書きだとついていきたくなるし、フォロワーが多いとますますフォロワーが増えやすくなる。
実力だけ貯めてもうまくいかないのがこの地球上のルールであって、今まで目を向けられていなかった錯覚資産を増やしていくことに注力するのはひとつの手法として覚えておいて損はない。
それにこれを知ることで同じ手口を使って要領よくやっている人が世の中にたくさんいることがわかる。使いようによっては悪質になることもあって、このしくみを理解することで 騙されずに本質を理解する目を養うことができると感じた。
この本のつくりも勉強になる
作者が何者かはわからないけど、ワクワクさせる表現やストーリー、数字や実例を使った文節は説得力があって、章が進むほど本の虜になっていく。
またおもしろいところやクライマックスでは文字を大きくし「おお……」ってなるので、これも作者の狙いなんじゃないだろうか、と考えるのは懐疑的すぎるだろうか。
あとは順序立てて整理されていて読みやすい。
非常にいい本だと思うのでオススメしたいのは間違いなくて、だけど説得力がありすぎてやたらに「これからの時代は錯覚資産だ!」ってなる人もいるんじゃないかと感じた。
あくまで個人的な考えでいうと、たしかに錯覚資産を用いて有利に物事を進めている人もたくさんいる。
そしてごくたまに、錯覚資産でレバレッジを効かせすぎて中身は薄っぺらいペラペラな人もいると思う。たまにだけど。
全員にはバレることはないけど、バレる人にはバレる。なので実力を土台にしないと悲惨なことになるかもしれない。
だから実力をつけることを念頭におきながら、それによる成果を加速させるために錯覚資産を意識するくらいでもちょうどいいんじゃないかと感じた。
(本書でも錯覚資産だけが大事とは言ってないけど、読んだ後に「錯覚資産」っていう新しいワードに引っ張られて気持ち良くなってしまったので。)
ちなみに この本を読む弊害をあげるとするなら、
- 物事をひいた目で見てしまう
- 素直に楽しめなくなる
- 人と同じものに共感できなくなる
ということが言えると思う。
だけど僕はこの本を読んだほうがいいと思う。
なぜなら いま知らないほうがいいことであっても いざ時代や環境が変わったときに何が自分の失敗原因かがわからず不安になってしまう。
それなら事実を少しでも多く知っておいて、対応する術を増やしておいたほうが結果的に良い人生を送れるんじゃないだろうか。
前提としてどちらが正解なんてものはないと思う。
だけど僕はもっと現実を知りたいし、そっちに賭けていきたい。