仕事から逃げたい、人生が辛い、会社が憂鬱で限界……逃げたい時は逃げてもいい

生きていれば誰だってちょっとしたきっかけから足を踏み外してしまうことがあります。

 

僕の身内に、仕事で心を病んでしまって会社を辞めることになった人がいました。

 

定期的に電話したり会ったりしていたので状況はよく知っていました。

ほんの1年前まで元気にしていて上の人からも頼られていたと思っていたのですが、あるときからイジメにあうようになってしまいました

それでも頑張って通っていました。

 

辞めてしまえば親や親戚から、これからどうするんだろう、と冷たい目で見られてしまうのはわかっていたので、ますますプレッシャーがかかって嫌でも辞めることができません。

会社には行きたくない。だけど辞めても周りから責められるかもしれない。どうすればいいのかわからなくなっていました。

みるみるうちに元気がなくなって、暗くなっていきます。

 

たまに僕のところへ電話が来るようになりました。

常に心配事がたくさんあって自分で整理できないようでした。

会社にも家族にもがんじがらめになっていて、他に相談する人がいなくなっていました。

ひとつずつ僕のわかる範囲で悩みを答えていきました。

同じ質問に何度も答えました。

しばらく話して安心すると電話が切れました。

だけど数日後にまた同じ質問が来ることもあります。

頭の中で同じ問題がぐるぐる回っていました。

その場で安心できたとしても、何も根本的な解決ができていなかったのです。

 

追い込まれると思考停止になってしまうのは誰にでもあることです。

だけど精神的にやられてしまうと次から次へと心配しなくてもいい問題まで気になってしまい、一度ハマった沼から抜け出すには外にいる人間が引きずり出す必要があることを知りました

たぶんですが、親も困っていたけどどうすればいいのか分からなかったのではないかと思います。

それどころか周りの心配の声が本人を追い込んでしまっていました。

 

いつしか嫌なことを忘れるためにお酒に逃げるようになっていました。

たまに酔っ払ってLINEが来ることもありました。

お酒は一瞬忘れることができますが、切れたときの反動が大きいです。お酒に逃げるのはあまり良いことではありません。

 

あるとき電話の着信が入っていることに気づいたのですが、きっとまた酔っ払っているんだろうと思って そのまますっかり出るのを忘れてしまいました。

ちょうどそのとき僕自信も忙しい日が続いていて、そのあとも何度か着信があったのですが 出られない日が続いていました。

 

それからしばらくすると電話がかかってくることはなくなり、僕ももう大丈夫なのだろうといつの間にか忘れていた頃、突然LINEが飛んできました。

見るとそこには「死」や「殺」の文字が並んでいました。

もちろん恨まれるようなことはしていません。嫌な予感がしました。

あとになってわかったことですが、他の知り合いにも同じようなメッセージが送られていたようです。

その人の周りからは知り合いがどんどん離れていきました。

 

そして次に会ったときには会社を辞めていました。

周りにわかってくれる人がいなくなって心が閉ざされていました。

僕にかける電話が心を維持できる最後の綱だったのかもしれません。後悔しました。勝手に責任を感じてしまいました。

 

最後の頼みがなくなって心の中で自分を維持しているタンクが爆発したとき、人は人でなくなってしまいます。

わかってもらえる人がいなくなって、もうどうしようもないという状況を通り越したとき、人は他人に危害を加えることを知りました。

そうなってしまえば、とうとう身の周りの人ではどうしようもなくなってしまうのです。

 

きっかけはちょっとした失敗からだと思うのです。

1年でここまで人が変わるのかと思うくらいやつれていました。

言葉も少なくなっていました。というより何を話しているのかわかりませんでした。病院に通わなければならなくなっていました。

 

自分の役割、頼られること、頼りにする人がいなくなると、人は生きていくことができません。

そうやって人知れず亡くなっていく人も世の中にいます。

LINEで「死」の文字を見たときは、こわくなったし、正直もう関わりたくないと思いました。

だけど、あんなに穏やかだった人が最後の最後に自分の自尊心を守るために伝えられる言葉は「死」や「殺」だけだったのかもしれないと思いました。誰かを憎むことしか繋がることはできなくなっていたのかもしれません。

 

それから僕はふとしたきっかけからパソコンを教えることになりました。

もともと自分でインターネットをやっていたはずなのに、しばらくパソコンを触っていなかったせいか、ひとりでは何もできなくなっていました。

自分だけでは動けない体になっていました。自信を失っていました。

 

パソコンを開いて最初から手取り足取り手順を教えました。

ビジネスに必要な基本操作やソフトの使い方を教えました。

 

ボタンを押すたびに、本当にクリックしてもいいのかよく確認されました。

すっかり自信を失っていて、自分の判断ではできなくなっていたのです。

確認しなくてもどうせやり直せるからどんどん押していい」と言いました。

 

そして一回一回 作業を止めて、メモを取っていました。

「メモを取る時間があったら失敗してもいいから、何度でも聞きなおしてやり直せばいい」と言いました。

 

少しずつですが、繰り返すうちにできるようになっていきました。

不思議なもので、ひとつ自分でできると次の作業はどんどん早くなっていきます。

ちょうどこの数ヶ月間に失ったものを取り戻しているように見えました。

 

一通り終わったら、あとは自分ひとりで最初からやってみるように言いました。

だけどその日は疲れたようで、作業をやめてしまいました。

やっぱり難しいのかな、うまく教えられなかったかな、と残念に思っていました。

 

だけどその1ヶ月後に電話がかかってきたとき、「今度はこういうことがしたいんだけど、どうすればいい?」と。

教えたことがもうひとりでできるようになっていました。

 

質問に答えたあとは、最後に「ありがとう」と言ってくれました。嬉しかった。

 

結局 足りなかったのは、ほんのちょっとの自信だけでした。

自分で何かひとつ作り上げた成功体験でした。

それだけで誰かの許可を待たなくても、ひとりで動き出すことができるようになります。

 

そしてひとつ作れたらあとは簡単です。それを大きくしていくだけです。

まず最初のひとつを自分で作れたらすぐに自信が湧いてきてもっとやりたいと思ってきます。

 

でも世の中には心もとない他人の行動や発言で自信をなくして追い詰められてしまう人がたくさんいます。

そんなとき、「どうせ自分なんかにはできない」と思い込むようになってしまいます。

 

なぜ他人のことを否定する人がいるのでしょう。それはその人も自信をちょっとなくしてしまっているからです。

自信がないから他の人を落として自分を守ろうとします。

そして落とされた相手もまた他の人を傷つけてしまうようになるのです。

その空気はどんどんどんどん広がっていきます。手遅れになる前に止める必要があります。

 

まず嫌なことが続いてもうダメだと思ったら自分で逃げてください

真面目な人ほど、他人の言うことを聞いて生きてきた人ほどすぐにリタイアしていきます。

限界のときは親や上司すら関係ありません。自分で自分の状況が判断できるうちに辛くなったら逃げていいんです。周りのプレッシャーを気にせず辞めたらいいんです。

自分が死なないことと、人に危害を加えないことさえ守っていれば、別に何をやっててもいいんですよ。

 

それよりも自分で自分のことを追い詰めないでください

自分で自分のことが何もわからなくなって、人にも頼れなくなったらその先には何も待ってないです。

死のほうが楽だと思ってないうちはまだまだ大丈夫です。そうなる前にとにかく逃げることです。いつでも逃げていいんです。逃げることは悪いことじゃないです。

 

そして、周りの人は もし自分を追い込んでしまって何もできなくなっている人を見かけたら、ダメなやつだと思わず自信をあげてみてください

1歩目を踏み出せるだけのほんのちょっとの自信でいいです。

勢いがついたらあとは自分でいけるようになります。

 

これから少子高齢化、人口減少で誰もが経験したことのない難しい時代がやってきます。

だからこれまでの時代よりも失敗の数は増えていくことになるでしょう。失敗がもっと当たり前の時代に突入します。

だけど失敗を悲観する空気になってしまっていては、辛いと感じる人が増えてしまいます。みんな暗くなってしまいます。

 

だけど、そもそも失敗は何度やってもアリなんですよ。周りで深みがあって尊敬したいと感じる人は、とにかく失敗の数が尋常じゃないです。

そしていいカッコだけして失敗を隠している人ほど中身を知ったら薄っぺらいです。

歴史上の有名人は華やかな成功の裏に何百回、何千回の失敗を体験してるじゃないですか。

 

失敗しても自信をなくさなくていいです。

周りで失敗を笑ったり喜んだりするのは残念な人なので放っておけばいいし、全国を探せば同志がたくさんいます。

自分の本当に好きな仲間を増やせばいいです。今はそこに行かなくたってネットでいくらでも繋がれます。

 

ちなみに僕がうまくできずに沈んだときは、ジブリ作品の「魔女の宅急便」を思い出すようにしています。

主人公のキキが失敗して落ち込んで今まで当たり前にできてた魔法が使えなくなってしまうんだけど、友達になった絵描きさんに相談したら、「分からなくなったらジタバタするしかない」と言われます。

だけどキキは「それでもダメだったら?」と聞くと、「描くのをやめる。散歩したり、景色をみたり、昼寝したり。何もしない。そのうち急に描きたくなるんだよ」と答えます。そして、「悩んでから絵を描くってことがわかったみたい」と続けます。

 

人生もこれと同じで、失敗して沈んでできなくなるときは必ずどこかでやってくるんですよね

だけど悩んで乗り越えたときは一皮むけてパワーアップした自分になっています

 

ずーっと全速力で走れる人なんかいないです。どこかで失敗するということはスピードを出しすぎているからいったん休めと体が教えてくれているということなんですね。

その休息期間に反省して次はどうすればいいんだろうと考えればいいのです。

そしてまた走り出せばいつ間にか少しずつゴールにたどり着けるようになっています。

 

だから逃げたいときはいつでも逃げよう。

変えられない過去はどれだけ悩んでも意味がない。ちょっと休んで回復したら、次に何をするか未来のことを考えよう。