怠け者であったり、怠惰であったりすることがたまに美徳とされることがある。
これはあるドイツの軍人 ハマーシュタイン の言葉だ。
将校には四つのタイプがある。利口、愚鈍、勤勉、怠慢である。多くの将校はそのうち二つを併せ持つ。
一つは利口で勤勉なタイプで、これは参謀将校にするべきだ。
次は愚鈍で怠慢なタイプで、これは軍人の9割にあてはまり、ルーチンワークに向いている。
利口で怠慢なタイプは高級指揮官に向いている。なぜなら確信と決断の際の図太さを持ち合わせているからだ。
もっとも避けるべきは愚かで勤勉なタイプで、このような者にはいかなる責任ある立場も与えてはならない。
もう少し砕けた感じで書くと、
- 有能な働き者は、指揮官の下で作戦や策略を立てる補佐役に向いている。
- 無能な怠け者は、言われたことをやるルーチンワークに向いている。
- 有能な怠け者は、人の上に立つリーダー役に向いている。
- 無能な働き者には、責任ある立場を与えてはならない。
とまあこんな話だ。
ここで意外なのは、働き者のほうが仕事にとって重要視されがちかもしれないが、有能な怠け者がリーダー役に適しているという話をしているところだ。
だけどこれを聞いたとき、とても芯を食った話だと思った。
実際に自分の周りで知っている 良い感じにリーダーを担う人たちも、みんな面倒くさがり屋だからだ。
そして自分が楽できるよう、いかに効率よくできるかということにリソースを割こうとする。
たとえ有能であっても働き者の人は、思い切って他の人に任せられないし、他の人がやっていることが気になってしかたない。
怠け者であるということは確かにリーダーになるにあたって重要な一要素なのだと感じる。
そして、マズイのが無能な怠け者かと思いきや、無能な働き者。
これはなぜかというと、間違えたことを自分の判断でどんどんやっちゃうので他の人に迷惑がかかり、チーム全体の効率を下げてしまうことがあるからだ。
僕が会社に就職して新入社員だった頃はこれに近かった。
それでも上司に迷惑をかけたり自由にやらせてもらっていたおかげで、今だからこそただなんでもやればいいってわけじゃないことがわかったのだけど。
ただ、がむしゃらに働くよりかは自分の立ち位置を知ったうえで、できることをやっていたほうが今思えばよっぽどよかったと思う。
結局ここで言いたいのは、単純に怠けることがいいことだよって言ってるわけでもなくて、もちろん働くことが大好きで全力をかけて仕事にコミットしている人もいて、そういう人で会社が成り立つ部分もあるし、実際にそれですごいパフォーマンスをあげている人はたくさんいる。
みんな有能な怠け者のリーダーを目指したらそれはそれでチームは回らない。
だけど、ただ怠ける精神の人が一概に良くないと考えるのは安易であり、リーダー気質の人もいれば、ルーチンワークが得意な人もいれば、戦略を考えたりする補佐の役割が好きな人もいて、それぞれが得意でやりたいと思う仕事をやっていれば良いということだ。
現代社会で生きていると、多くの場合は働き過ぎて自分の周りが見えなくなって、どうしても目の前の仕事以外はおろそかになってしまいがちなので、全体的には自分のやっていることを見つめ直す時間も必要なんじゃないかと思ったりする。
怠けるのは必ずしも悪いことではなくて、「何もしない時間」というのも必要経費だし、休息したり、仕事とまったく関係ないことが実は仕事に繋がったりもするものだ。
よく言われるプログラマーの三大美徳のひとつに「怠慢」という項目があって、反復作業をやったり面倒くさい作業を自動化することに喜びを感じられる人は、プログラマーに向いているという話もある。
何か生み出すときって、だいたい自分の何かに不満があるときで、それを直そうとするから結果的に何か便利なものが生み出される。
「楽しい」「幸せ」みたいなプラスの気持ちと同じように、「面倒くさい」って意思は誰しもが持っている立派で何かを変えようとする正しい反応だから、どんどん自分の怠惰な気持ちに向き合って、大切なものとしてとっておけば良いと思う。
pha さんの著書でも似たような話に触れているので、興味がわいたらこちらもどうぞ。