もう何年も前のことだ。
毎日仕事で忙しくして残業続きだった頃、あろうことか大きなケガをしてしまい、1週間会社を休むハメになってしまった。
ケガをした瞬間、会社を休むことになるというのはわかった。それくらい大きなケガだった。
そのとき最初に思ったのは、なぜか自分の体より「明日の仕事どうしよう」だった。
それなりに重要な仕事を担っていたので、自分がいなくなると業務は止まるし他の人に迷惑がかかって大変なことになってしまうかもしれない。
自分の体より、仕事を優先してしまっていた。それくらい仕事にハマっていた。
そしていざ休んでからも仕事の連絡はやっぱり来た。
迷惑かけてるんだろうなー、申し訳ないなーなんてこと思って気持ちは休まらなかったし、実際に休んでいる間も仕事をやっていたのだけど、これだけのケガをしても仕事をみていないといけないのか、と思ったら、これから先、一生ケガはできないどころか、カゼもゆっくり引いてられない、旅行へも安心していけない、ってことになってしまうじゃないか。
魔が差して思い切って仕事を一切遮断してみた。
そうしたら案外 僕がいなくてもなんとかなっていて、いつも通りに業務が進み、1日後には通常運転でメールでやりとりがなされていることが確認できた。
「なんだよ、大丈夫じゃん」と思って笑うと同時になぜか騙されている感覚になった。
ベッドに寝ながら考える時間がたっぷりあって、久しぶりに仕事を忘れて思考が深まった。
毎日一生終わらない全力疾走の持久戦をやっていたせいで、隣の芝生が青いどころかそもそも見えなくなっていたのだ。
世界も日本も東京ももっと広い。
僕が今まで大変だと思っていた作業は、別に僕がいなくなったらいなくなったでなんとかなるものだし、よく考えたらそもそもそうじゃないとすぐに会社なんてなくなってしまう。
まあそれでも休んでいても仕事は次々やってくるし、やらなきゃいけないことはたくさんあって、心が完全に休まる暇はなかったもので、
つらいなー、自分はバカだなーって思って転職したら何事もなくなった。
その経験があったからこそ、あのときよりつらくないなーって思ったらどんなことでも乗り切れるようになったので、結果的にはよかったのかもしれない。