この記事の続きです。
1話目はこちらです。
部署に配属されて2ヶ月が経ちました。
さすがに最初の頃に比べると任される仕事は増えてきます。
しかしそれでもやっぱり暇な時間は多く、あいかわらず時間を持て余していました。
そんなとき、
(他の同期は今頃、何やってるんだろうなあ……)
と思いふけってしまうことがありました。
また、たまに外出して客先で仕事をするのですが、いつしかそれが唯一の楽しみになっていました。
少しでも外に出て毎日の仕事に変化がつくだけでも、だいぶ気持ちが入れ替えられます。
なにより外出したときは主任がいないので、よけいなお説教で時間が潰されるということがないのも幸せなことでした。
同期からのメール
今日も客先で仕事をし、ひと段落して休憩していました。
ふとスマホを見ると、同期のひとりからメールが来ていることに気がつきました。
「久しぶり! 今日、飲みに行こう。」
同期との飲み会は部署に配属されたときの歓迎会以来。
胸が踊りました。
もう数時間したら仕事が終わってこのまま帰るだけだったので、すぐに
「行く!」
と返事をしてウキウキしながら仕事に戻りました。
久しぶりの同期との再会
仕事が終わってすぐに品川駅へ向かいます。
客先からは少し遠かったので、僕が一番最後に着いたようです。
席へ案内されると、すでに同じ部署に配属された仲良しの同期2人がいました。
すぐさま、
「久しぶりー!」
と再会を喜びました。
そして、何も変わっていないようで安心しました。
ここ最近は新しい出来事がたくさんあって、やっと数年間ぶりに再会したかのような感覚でしたが、実際はたったの2ヶ月ぶり。
そうそう変わるものではありません。
ひとまずお互い元気そうだったのはなによりでした。
遠藤くんのグチ
話題はやはり仕事の話です。
「最近、仕事どうなのよ?」
と誰かが火蓋を切ってからそこから出るわ出るわ、同期のひとり、遠藤くん(仮名)から飛び出てくるのは愚痴の数々。
「俺、部長にいつも怒られてばっかりだよ。」
「今日も怒られてさー。」
「めっちゃ人使い荒く扱われてる。」
遠藤くんのここ2ヶ月分の不満を吐き出すのには30分ほどかかりました。
だけどそれを聞いて、
なんだ、楽しそうじゃん(笑)
、と思いました。
体が人一倍大きくて見た目は少しイカつい遠藤くんなのですが、そうやって先輩たちからイジられている話が面白くて面白くてたまらないのでした。
遠藤くんの失敗
というのも、遡ること2ヶ月前。
部署の配属が決まったときの歓迎会でも、さっそく遠藤くんは他の先輩からイジられ、「部長にお酒を作れ」と怒られていました。
本当はマジメでちゃんと先輩に気に入られておきたかった遠藤くんなのですが、どうもこういうときに空回りして失敗してしまうようなのです。
調子に乗りすぎて空気を凍らせるような発言をしてしまい、部長に早くも嫌われてしまいました。
(ああ……、遠藤くん 終わったな……。)
と思ってしまうほどでした。
この後に同期が集まって反省会をしたのですが、
「俺はなんであのときあんなことを言ったんだろう……。」
と、あのときも嘆いていたのを思い出します。
しかし、そんな遠藤くんも日が経てば周りの雰囲気をつかめるようになってきたのか、周りも遠藤くんの本当の人間性をわかってくれるようになったのか、今はよく飲み会にも誘ってもらえているそうです。
相変わらず部長から毛嫌いはされているようですが……(笑)
それを知っていたので、どうも毎日怒られて先輩たちに揉まれながらも、話を聞いていれば結局はわりと愛されているようでした。
しかしそれでも遠藤くんは割と本気で悩んでいるようで、それもまた面白くなってきてしまいました。
器用な小泉くん
一方でもうひとりの同期、小泉くん(仮名)は、器用な性格で、仕事も電話対応のような新人のやりそうな仕事に加えて、適度に先輩から仕事が振ってくるそうで、何事もなくうまくやっているようでした。
まさに新人のやりそうな仕事をセオリー通りにやっているのが話から伝わってきて、うらやましく思ってしまいました。
それを聞いた遠藤くんが、
「お前、配属されたチーム良すぎやろ。運が良かっただけやで(笑)」
と冗談交じりに話していました。
それを聞いて小泉くんも
「うるせー! 知ってるよ(笑)」
と言っていました。
実際、小泉くんの周りは、すごく優しくて優秀な人たちに恵まれているようでした。
しかし、比較的大きな仕事を手掛けているチームのようで、こないだ重大な問題があって、対応するのが大変だったという話も聞きました。
運の要素
小泉くんのように人に恵まれている場合もあれば、遠藤くんのように忙しいチーム、僕のように仕事がなくてのんびりしているチーム、さまざまでした。
話を聞いていてみんな薄々気づいてはいたのですが、チームによって雰囲気が全く違っていて、こればかりは運のようでした。
また、上の役職に上がるためには上司から気に入られていて、推薦が必要だという話もありました。
一定の努力は必要ではあるものの、そのチームで合うか合わないかという運の要素も大きいようです。
とある飲み会の席で一緒になった課長もそういえば、若くして課長になれたそうですが、
「オレが課長になったのは……まあ……運が良かっただけだよ。」
と言っていたのを思い出します。
よくよく考えてみると、たまたまかもしれませんが、その部署の偉い人たちは出身地がみんな同じでした。
もちろん自ら変えられることもあるのでしょうが、なんだか運みたいなものも必要で、不確定な要素が多すぎて、ここで自分を変えていくには努力してもムダだなあ、といったことを感じ始めていました。
自分の力で変えられないことに歯がゆくなってしまいそうでした。
同期はかけがえのない存在
そして、もうひとつ感じたことは、みんな不満を持ちつつ頑張ってるんだなあ、ということでした。
隣の芝生は確かに青く他のチームがうらやましくは見えたものの、みんなそれぞれの不安があり、自分と同じように将来について悩んでいるんだとわかり、少し気が楽になりました。
同じ目線での不満を話し合える同期の存在は大きなものでした。
ふだんの仕事で関わるのは周りは全員、年上の人たち。
なにより、久しぶりに会えた同期はやっぱり楽しかった。
こうやって対等にバカを言いあえるのは同期だけです。
グチをこぼしたり、本音を語れたりするのも同期だけです。
今はその会社を離れて同期とも気軽に会えなくなりましたが、あれから数年経った今でも同期の何人かとはたまに飲みに行くことが続いています。
同時に同じ会社に入社して、同じ新人研修を過ごしたという体験によって得られた信頼は、想像以上に固く、かけがえのない存在になっていました。
この同じ時間を共有できた同期という存在は、社会人になってからの仕事の関係では なかなか作ることができない、心が通じ合える貴重な仲間であると言えます。
これからも大切にしていきたいと感じています。
以下の記事に続きます。